フェイスマスクの弊害ー子どもの情緒・言語力・コミュニケーション力の発達に影響
コロナが発生してからおよそ2年。私たちは様々な場面で生活様式の変更・制約を余儀なくされてきました。イギリスでは3度のロックダウンを経て現状に至りますが、その間に子ども達が受けた影響は大きく、それに挑む様々な活動の一つとしてスカウト団体が行ったことについては前回の記事でご紹介した通りです。今日は、ロックダウン、フェイスマスクなどが子ども達の学習・発達に与えた影響に関してイングランドが行った調査の結果をお伝えします。(BBC記事参照)
調査対象となったイングランドの5万人の生徒とイングランド全域の学校からの情報によると、4~5歳児の言語発達に関して、サポートを必要とする件数が増加していることが分かりました。この時期の言語発達が不十分であると、子どもの今後の人生に甚大な影響を与える可能性があるため、イギリス政府は就学初年度の生徒のための追加支援として1,800万ポンドを投入すると決めたほどです。
パンデミックと闘うために講じられた措置(ロックダウン、フェイスマスク、ソーシャルディスタンスなど)が、社会的・情緒的発達や語彙の増加に必要不可欠とされる貴重な「経験・実体験の場」を子ども達から奪ったと報告されています。祖父母らとの接触が控えられ、友達と遊ぶ機会も減り、公共の場でマスクを着用しているため、子ども達が会話や日常の経験にさらされることが少なくなっているのは明らかです。
イングランドで調査対象となった小学校のうちの76%が、第一回ロックダウン後の2020年9月に入学した生徒は、これまでよりも多くのコミュニケーションの支援が必要であったと述べました。また、96%の学校が、生徒のスピーチと言語の発達について懸念を示しており、実際のところ前年度比20~25%増の割合で実際の支援要請がありました。
また、就学を控えた子どもを持つ保護者達の半数以上が、子供が学校に入学することを心配しており、自分の子どもは「学校」という場で他者とコミュニケーションを取る、自信をもって学校生活を楽しむ、友達を作る・・・といった場面で必要な言語スキルや情緒の発達が充分に整っているのだろうか、という点を心配している声が多く聞こえました。
もし子ども達が、自分自身を表現したり、仲間と交流したり、お互いを理解したりする、ということができないとなると、子ども達の自尊心や自信を育むことができずに、結果、幸せを感じることや健やかに成長することが難しくなります。調査によると、この時期の子ども達に言語発達の問題がある場合、成人期までに読書で苦労する可能性が4倍、心理的な問題を抱える可能性が3倍、失業する可能性も増えるそうで、正に子どもの未来に直接かかわることなのです。
こういった現状に、私たちは何ができるでしょうか?就学前の子ども達の発達を促すためにご家庭でお子さんとできることを、次回はご紹介したいと思います。